「うちの社員、勝手に使ってるみたいで」
「若い社員が、自分のスマホでChatGPTを使っているみたいなんです」——ここ最近、経営者の方から急に増えた相談です。禁止したほうがいいのか、黙って見ていていいのか。答えが出ないまま、なんとなく時間だけが過ぎている。福岡の中小企業でもよく聞く話です。
先にお伝えすると、禁止しても、たぶん止まりません。便利だからです。「使うな」と言い続けると、隠れて使う方が増えて、会社としては何が起きているのかが余計に見えなくなります。
私(エムビジョンの代表)も、自分の会社の事務をAIで回しています。そのうえで申し上げると、問題は「使っていること」ではありません。何を入れてよくて、何がだめかを、会社が決めていないことです。決めることは、3つだけです。
入れてはいけない情報・3か条
①お客様の個人情報
氏名・住所・電話番号・メールアドレスなど。いちばん起きやすいのは、お客様から届いたメールを丸ごと貼り付けて返信の下書きを頼む形です。悪気はまったくないのですが、この形がいちばん多いです。
②取引先との秘密
契約の中身、仕入れの単価、見積の金額。「秘密を守る約束をした情報」と考えると分かりやすいと思います。金額を伏せて、進め方の相談だけをAIにする。それでも十分に役に立ちます。
③社内の未公開情報
決算の数字、給与や評価などの人事の情報、まだ公表していない新商品や店舗の計画。社内でも一部の方しか知らない情報は、迷う前に「入れない」と決めておくのが安全です。
覚え方は、この一言で足ります
3つとも暗記するのは大変です。覚え方は1つで足ります。
新聞に載って困る情報は入れない
社員の方に伝えるときも、この言い方がいちばん伝わります。分厚い規程を配るより、この一行のほうが現場に残ります。
固有名詞を「◯◯」に置き換えれば、たいていの仕事は頼めます
3か条というと窮屈に聞こえますが、裏を返せば、伏せてしまえばほとんどの仕事は頼めます。たとえばクレームへの返信なら、無料で使えるAIを開いて、次の文をそのまま貼り付けます。
お客様から「納品された商品に不良があった」とお怒りのメールが来ました。まず事実確認が必要な状況です。誠意が伝わり、かつ安易に全面的な非を認めすぎない返信の下書きを作ってください。
このとき、続けて貼り付けるメール本文の中で、お客様の氏名と社名を「A社のご担当者」に置き換える。金額が出てくるなら「◯◯円」にしておく。やることはそれだけです。出てくる下書きの質は、ほとんど変わりません。固有名詞は、戻ってきた文に自分で埋めれば済みます。
コツ1|3か条を「紙1枚」にして社内で配る
立派な規程を作ろうとすると、作るのに何か月もかかって、結局配られないまま終わります。上の3か条と「新聞に載って困る情報は入れない」の一行を紙1枚に書いて配る。小さな会社なら、まずはこれで十分に機能します。
コツ2|「迷ったときの決め方」まで書いておく
ルールが現場で使われるかどうかは、迷ったときにどうするかまで書いてあるかで決まります。「迷ったら新聞に載って困るかで判断する」「それでも迷ったら入れない」。この2行を足しておくだけで、担当者が自分で判断できるようになります。
注意点|「禁止」で終わらせない。そして最終確認は人が
ここまで読むと「やっぱり危ないから禁止」と思われるかもしれませんが、逆です。禁止ではなく、ルールを決める。それだけで、安心して使える道具になります。3か条に触れない仕事——メールの下書き、文章を短くまとめる、写真から文字を読み取る——は、社内にいくらでもあります。
そのうえで、もう一つだけ。AIは「優秀だけれど思い込みの激しい新人」です。もっともらしい顔で事実を取り違えることがあります。出てきた答えを、そのまま社外に出さないでください。最終確認は必ず人が行う。ここだけは、どんなにAIが賢くなっても人の仕事として残ります。
なお、有料版や管理者の設定で、安全性をさらに高める方法もあります(2026年9月時点)。この部分は仕様が変わりやすいので、導入前にその時点の内容をご確認ください。
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